国語の成績を上げるには読解力を上げることが必要です。読解力を上げる方法はほとんど知られていませんが、現実的な方法が2つあります。
このページでは読解力を上げる方法である「30回音読」と語彙集の暗記をご紹介します。
1.読解力とは
1.1.読解力とは
読解力とは、文章を読んだときに、どの程度深く理解できるかという理解力のことです。読解力は国語力の土台であり、難しい問題になればなるほど読解力が問われます。
よく、受験問題集や過去問の国語の文章を読んで「意味が分からない」と言う人がいますが、意味が分からなければ問題が解けるはずがありません。
こういう人はぜひ、このページを読んで読解力を上げる勉強をしていただければと思います。
1.2.読解力を構成する諸能力
読解力は個人によってある程度決まっていて、あまり変動しません。何かの勉強をしたら1~2ヶ月で速やかに読解力が上がる、というのは起きにくいのです。これは皆さんも感じているでしょう。
読解力は、「個人の生まれつきの読解力(根本的読解力)」、人生で読んだ総読書量、語彙力(意味が分かる語彙の総数)、多様な人生経験、そしてそれに対する深い思索などで構成されていますが、簡単に言うと、読解力は「根本的読解力(才能)」と読書量、語彙力でほぼ決まります。
【読解力≒根本的読解力×読書量×語彙力】
ここで「根本的読解力(才能)」は変わりませんから、読書量と語彙力で読解力がほぼ決まると考えて間違いありません。
読書量が重要なのは、読書により、知識が増えて理解力が高まり、読むときに意味を考えながら読むことで思考力も上がり、語彙数が増え、速く読めるようになるからです。
語彙力が重要なのは、言葉の意味、特に抽象的な言葉の意味が分からなければ、文章の意味が分からないからです。文章は個々の言葉で成り立っており、言葉の理解(=語彙力)が読解力の基礎になります。
1.3.読解力を培う方法
以上から読解力を上げるには読書と語彙力強化が必要になることが分かりますが、しかし、中学生は勉強やクラブや塾通いで忙しいので、読書を悠長にしている時間はなかなかありません。
そういう人にオススメなのが「30回音読」です。
以下では30回音読と語彙力強化について書いていきます。
2.「30回音読」とは
2.1.読書百遍
「読書百遍、意自ずから通ず」という故事成語がありますが、これは「難解な文章も、繰り返し読めば意味が自然に分かってくる」という意味です。現代人で同じ文章を100回も読む人はほとんどいないと思いますが、これは実際に役に立つ勉強法です。
同じ文章を1回、5回、10回読んでいくと、文章理解度がどんどん高まります。そして30回ほど読んだ文章が30~50文章になると、読んだ本だけでなく、初見の文章の理解度(読解力)も上がっていきます。
ただ、回数については、100回は今の中高生には時間的に難しいので、無理のない範囲で30回にしています。30回でも十分な効果があることが確かめられています。
2.2.何を読むか
「30回音読」では、学校の教科書の文章(定期テスト対策にもなる)や受験問題集・過去問の問題文などの、3ページ前後の文章を読むのがオススメです。
オススメ問題集は以下になります。
「システム中学国語」シリーズ(出口汪著、水王舎)
「中学生版 出口の国語レベル別問題集」シリーズ(出口汪著、東進)
「国語長文 難関徹底攻略30選」(東京学参)
「国語融合問題完全攻略30選」(東京学参)
2.3.毎日10分音読する
「30回音読」では、学校の教科書の文章などを、毎週1つ、毎日10分読むのがオススメです。
【1文章を1日10分(4~5回)×7日⇒約30回】
文章の長さは毎回異なり、1回読む時間も変動しますが、毎週読む時間を変えるのは不都合です。また、教科書の文章は長いものになると20~30ページとかになりますから、これを30回は時間がかかりすぎます。
よって、回数を固定するより、時間を固定するのが良いでしょう。
時間は10分程度が現実的です。もちろん国語力を早く上げたい人、国語だけが不得意で国語に時間をかなり割ける人は毎日30分など読むのが良いです。
1文章を30回も読むと、当然、文章の理解度がどんどん深くなり、文章もある程度覚えます。
2.4.一年続ける
毎週1文章を30回読み、一年で50文章、二年で100文章と読み続けます。そして「30回×30~50文章」ほど読んでいったら、途中で初見の文章でも文章理解度がどんどん高まり、国語の成績も上がりだします。
これは「量が質に転化する(何事もたくさんの量をこなしていくと、ある時に急に上達する、という経験法則)」一つの例です。
2.5.復習する
30回読み終わった文章も、できるだけ復習をします。
翌週3回音読、翌々週も3回など、読み続けると、そのぶん理解度が上がり、読解力も上がります。
2.6.内容理解を深める読み方
30回読む、というと、回数を目的にする人が出てきます。そうなると、内容理解がおろそかになり、棒読みになる可能性があります。
読むときは、1回1回、キーワードとキーセンテンスを確認し、主張(筆者が一番言いたいこと)がどれでその意味は何かを確認し頭に入れ、内容が分からない箇所では数秒止まって理解に努め、考え、分からない言葉の意味は辞書で引いて意味を覚えながら、読んでいきます。
これにより、内容理解がどんどん深まり、理解力が上がっていきます。
そしてできれば30回読んだら、週末などにその文章を要約してみることをオススメします。内容理解が深まり、記述力も高まります。要約の書き方はこちらに書いています。
2.7.辞書を引く
30回音読をする際は、分からない言葉の意味は調べて欄外に書き、また、ルーズリーフにそれをまとめ、暗記します。特に、教科書の場合はテストに出ますから、必ず全てまとめ、暗記していきます。
【古典|学問や芸術の分野で、長期間、高評価を受けている作品。例「源氏物語のような古典」】
意味をまとめて暗記する必要があるのは、言葉の意味が分からなければ文章の意味も分からなくなるからです。文章の中で意味を暗記していくのが一番実用的です。
2.8.「30回音読」のメリット
30回音読をしていくと、当該文章について、理解度がどんどん深くなる、読む速さが速くなる、文章中に入っている言葉の意味を暗記できる、文章をある程度暗記できるようになります。
そして【30回音読×30~50文章】読んでいくと、いろいろな分野についての文章を読み、ある程度覚えていられるので、同じ分野の初見の文章の理解度が上がります。
それだけでなく、それらの能力が普遍化していき、以下のような能力も高まります。
(1)読解力:文章一般の理解度が上がる。
(2)速読力:初見の文章を読む速さが速くなる。
(3)論理的読解力:キーワードやキーセンテンス、主張、文章構成などを意識して読むことで、論理的読解力も上がる。
(4)論理的記述力・論理的思考力:論説文を大量に読み、論理的に読む努力をし、ある程度文章を暗記していくことで、論理的記述力・論理的思考力も高まる。
【現代文も古文も初めて学年1位を取ることができました】
Fさん(中学3年生、千葉県)
10月は中間テストがありました。今までは勉強を完璧にしたつもりでも国語の点数が思うように上がりませんでした。前回は76点(平均64点)でした。
テスト前に先生から教えていただいた勉強法、例えば、キーワードとキーセンテンスに印を付ける方法、選択肢問題の解き方、記述問題の書き方、意見文の書き方に加えて、教科書を何度も音読することなどでテスト対策をしたら、現代文は92点(平均63点)で、初めて学年1位を取ることができました。
また、古典(古文)は、現代語訳を暗記すること、品詞分解の方法、文法や古文単語の暗記法などを教えていただき、96点(平均71点)で、これも初めて学年1位を取れました。
次回の期末テストもこのやり方で勉強したいと思いました。
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3.語彙力強化
3.1.語彙集の暗記
語彙力強化の方法は3つあり、それは、読書、30回音読、語彙集の暗記です。本当は読書や30回音読のように文章の中で暗記していけるのが理想ですが、やはりなかなか出会わない語彙も多いので、語彙集で暗記することも入試には必要です。
以下のような語彙集の中から、自分の国語力や志望校のレベル、見やすさ、暗記しやすさを考えて選んでください。
「国語力を伸ばす語彙1700」(文英堂)
「中学 国語力を高める語彙1560」(受験研究社)
「中学生のための 語彙力アップ 厳選1000語」(すばる舎)
3.2.語彙集の暗記法
入試までの日数から逆算し、毎週暗記すべきページ数、もしくは語彙数を決めます。入試まで1年以上ある場合は、1日10分など決めて暗記していっても構いません。
例えば、入試まで1年で「国語力を伸ばす語彙1700」を暗記するとして、復習時間を考えて、10ヶ月で暗記すると決めた場合、1週間に約40語を暗記する必要があります。
以下、週に40語を暗記するとして書いていきます。
語彙集の暗記法
(1)テスト:テストして意味を即答できない言葉に印を付け、印を付けた語彙を暗記していく。
(2)「言葉⇒意味」×3回音読+例文3回音読:例えば、「逡巡(しゅんじゅん)⇒ためらうこと⇒逡巡⇒ためらうこと⇒逡巡⇒ためらうこと」と音読し、例文「事実を話すべきかどうか逡巡する」を意味を理解しながら3回音読する。
(3)見開き2ページを4周し暗記:見開き2ページ分進め、2ページを4周暗記。暗記法は(2)と同じ。
(4)全部いったん即答できるまで暗記:テストして意味を即答できない言葉に印を付け、更に3~4周暗記。全部即答できたら次の2ページへ。
(5)その日進めるだけ進める:できれば40語を1周。時間の目安は毎日10分。
(6)7日で7周し即答暗記:翌日も同じ40語を1周し、7日で7周したら普通暗記できるが、人によるので、全部即答できるまで7~10周する。
(7)第2週目:新規40語を同様にして暗記。プラス、第1週の40語を【5分×2回】復習する。復習の時は、まずテストし、即答できなかった言葉に印を付け、(2)の方法で5分間で5周前後暗記する。
(8)第10週目:1~9週の360語を復習しつつ、新規40語を暗記する。もう何週も暗記しているので、復習は週総計【10分×4回】ほど。
(9)復習週間:復習が追いつかなくなり、忘れてきたら、一度進めるのはやめて、全体の復習を1~2週行っても良い。
(10)入試まで復習:全体の暗記が6~7ヶ月で終わったとしても、復習をやめればまた忘れていくので、入試まで復習を続ける。
3.3.語彙集を辞書として使う
語彙集で暗記した言葉の中には、文章中に出てきても意味が分からないものが多いかもしれません。
その場合、文章の中で意味が分かるようにするには、語彙集の暗記を繰り返して暗記を深くすると共に、語彙集を辞書として使うことが有効です。
具体的には、30回音読をしているときに、意味が分からない語彙があった場合、語彙集で引き、あれば意味をテキストに書き込み、無ければ辞書で引き直して意味をテキストに書き込み、暗記に努め、次回読むときに意味を想起して言えなかったらまた暗記するようにします。
こうしていくことで語彙を自分のものにしていくことができます。
4.終わりに
ここまでお読みいただきありがとうございました。
この文章により、皆さんが読解力と国語の偏差値を上げるのに少しでもお役に立てれば幸いです。
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