最近の高校生は英文解釈を知らない、しない人が多いのですが、英文解釈をマスターすれば、大学入試の難解な英語長文のほとんどを初見で理解することができるようになります。
このページでは高評価の英文解釈書の1つである「基礎英文解釈の技術100」を例に、その習得法と習得すべき内容・長期記憶に入れる復習法・英文解釈書の選択法を詳細に書いていきます。
1.英文解釈が最重要な理由
1.1.英文解釈とは
英文解釈とは、【大学受験で出る、文法的に理解しにくい難解な英文を網羅的に集めた英文解釈書を使って、「SVOCM+和訳」を書くトレーニング】のことです。
高校1~2年生だと、英語は、英語長文教科書・英語表現教科書・英文法問題集・英単語集などを暗記するのに手一杯なので、英語長文問題集を自分で買って勉強する必要はありませんが、英文解釈は1年からでも学習すべきです。
1.2.英文解釈が最重要な理由
英文解釈トレーニングによって、大学受験レベルの英文なら、英単語熟語の意味が分かれば、ほとんど全ての英文を文法的に精密に理解(精読)することができるようになるからです。
英文解釈は英文読解の秘密兵器なのです。
2.「基礎英文解釈の技術100」の習得手順
2.1.英文をコピーしてSVOCMを振る
巻末202ページ以降に載っている英文だけのページを(拡大)コピーし、これにSVOCMを振り、和訳をノートに書きます。
本冊子にSVOCMを書いたりメモを書くと、2周目以降やりにくいため、コピーを取った方が良いです。
2.2.「学習の基礎知識」を暗記する
本編の前に書いてある「学習の基礎知識」「学習の基礎知識プラス」を3回熟読し、知らなかった暗記事項を全てルーズリーフに以下のようにまとめます。
【名詞のSVOCM上の4つの役割は?|主語・目的語・補語・前置詞の目的語の4つ。】
【It is +名詞+that節の4つのタイプは?|Itが前出の表現を受けていない場合①形式主語構文、②強調構文、Itが前出の表現を受けている場合③that節は関係詞節、④同格節。】
ここは重要で、最終的には全て理解し暗記し使えるようにする必要がありますが、英文解釈の学習初期に読んでも分からないことも多いので、SVOCMを振る練習を1周終わるごとに3回読んで理解を深めます。
2.3.五文型をまとめて、暗記する
英文解釈の基礎は5文型なので、5文型はとても重要です。5文型を理解し暗記していない場合は、5文型をまとめ、暗記します。
これは「基礎英文解釈の技術100」には載っていないので、総合英語(英文法参考書:総合英語Be、Forest、デュアルスコープ、Ultimate、ブレイクスルー、一億人の英文法等)などを読んでまとめます。
また、5文型と品詞との関係を理解し、以下のようにまとめ、暗記します。
【主語になれる品詞は?|名詞のみ。】
【目的語になれる品詞は?|名詞のみ。】
【補語になれる品詞は?|名詞と形容詞のみ。】
2.4.「SVOCM+和訳を書く」トレーニングを3周行う
「英文解釈」で「SVOCM+和訳を書く」トレーニングを1日2英文、土日4英文(週18英文)などと決め、進めます。この場合、約6週間で1周できます。
1周目が終わったらすぐに2周目に入り、全部で3週前後行います。
何周行うかは習熟度次第です。2周で全部「SVOCM+和訳を書く」が正確に素速くできるなら2周で、3周でできないなら4~5周行います。
2周目以降は間違えた英文のみ行います。
2.5.英文を習得し、長期記憶に入れる
英文解釈書は、「SVOCM+和訳」を書くだけで終わる人も多いですが、創賢塾では英文の習得もしてもらいます。
「英文の習得」とは、「SVOCM+和訳」を口頭でスラスラ言えるようにし、また、英文を「90%の理解度で、分速150ワード以上で、音読・黙読できる」ようにすることです。
そして、入試で使える知識にするため、更に2ヶ月以上復習して長期記憶に入れます。
このように英文を習得し、習得した英文の数をどんどん増やしていくことで、入試の初見の難解な英文も読めるようになります。
逆に、習得せず、復習しなかったら、徐々に忘れ、勉強した割には英語力・偏差値が上がりません。
こういう勉強法を「覚えては忘れ、覚えては忘れる勉強法」と言います。あなたはその轍を踏まないでください。
3.「基礎英文解釈の技術100」の具体的習得法
3.1.英文解釈書の習得法
ここでは「基礎英文解釈の技術100」(桐原書店)を例に、英文解釈書の習得法を書いていきます。
【「基礎英文解釈の技術100」の習得法】
(1)英文を読み、SVOCMを振り、和訳を書く
①「SVOCM+和訳」を書く:コピーした英文を1~2回読み、SVOCMを振り、和訳をノートに書きます。分からない語句や文法には☆印を付けておきます。1問5~15分。
②英単語熟語の意味を推測する:分からない英文は1~2分一生懸命考え、意味の分からない英単語熟語は前後関係から推測します。10~20秒で分からなければ飛ばします。
英単語の意味の推測は非常に重要です。入試でも分からない単語は必ず出ますし、推測する能力を測るために難単語の意味を語注で書かないことも多々あるからです。
推測の訓練をし続ければだいたいの単語の意味が推測できるようになります。
③辞書等を引く:語句欄を参照し、それでも分からなければ辞書・総合英語文法参考書を引いて更に2~3分考えます。それでも分からなければ飛ばして良い。
英文解釈と和訳は、「英単語熟語の意味・文法・構文・語法」と深く結びついていて、それらが分からなければ意味が分からないことも多いので、色々調べて可能性を検討することが重要です。
英単語や文法を調べても英文の意味が分かるとは全然限らないので、どんどん調べましょう。
このように英単語を推測したりSVOCMを解明する努力をすると、初見で英文を解明する能力が身についていきます。
(2)全文訳と解説を読み、文法的に完全に理解する
①解説を読む:解説をきちんと読まない人も多いのですが、そういう人は伸びません。必ず解説を読み、知らない知識にマーカーを引き、文法的に完全に理解します。
2周目以降はマーカーを引いた箇所のみを読みます。知っている箇所も全部読んでいたら時間がムダになります。
②総合英語で調べる:英文解釈書は英文法を懇切丁寧に解説しているわけではないので、分からない解説があれば、総合英語文法参考書(Be、Forest、デュアルスコープ、Ultimate等)を引いて、理解します。
③英単語熟語を暗記する:本冊子の英文の、知らなかった英単語熟語・文法・構文、理解できなかった箇所に☆印を付け、単語帳にまとめ、暗記します。また、音読時にそこを重点的に暗記します。
2周目以降の「SVOCM+和訳」は主に☆印の付いた英文だけ書きます。
(3)SVOCMと口頭和訳をやり直し、スラスラ訳せるようにする
①口頭和訳:次の英文に行く前に、【1文ずつ3回、スラッシュ訳で、口頭和訳】を行います。回数はスラスラ口頭和訳できるまで。1回でスラスラ言えたら1回で、3回で詰まり詰まりなら4~6回行います。
これをすることで、短時間で理解を確認し、記憶を深めることができます。
②スラッシュ訳:口頭和訳は、全文訳を覚えて訳すのではなく、きちんと理解しながらスラッシュで和訳します。
スラッシュ訳とは「英文を3~5ワードの意味のまとまりで区切り、前から前から訳していく」方法です。これをすると英語を英語の語順でスラスラ理解できるようになります。
(4)その日の時間まで先へ先へ。翌日も先へ。
「SVOCM+和訳」を書くのは復習をせず、先へ先へ進め、1周終わったら復習(2周目)を行います。
別に復習をしても構いませんが、どうせ「口頭和訳+音読」で英文を習得していくので、「SVOCM+和訳」は復習しなくても良いのです。
(5)「SVOCM+和訳」を書くのは3周する
①「SVOCM+和訳」は3周:1周終えたら、再び最初から最後まで行い、全部で3周行います。3周でまだ身についていないと思ったら、4~5周行います。
②書くのは分からない英文のみ:2周目以降は全文の「SVOCM+和訳」を書くことはせず、「1文ずつ口頭で和訳⇒全文訳で確認」し、和訳できない、間違えた、そもそも口頭で和訳できない英文のみ、「SVOCM+和訳」を書きます。
③英単語や文法は調べて良い:英単語熟語は語句欄や自分の英単語帳を見たり、辞書を引いても構いません。1周目と同じく、間違えた英文・英単語熟語等に☆印を付けます。
(6)英文を習得する
①英文習得法:「SVOCM+和訳」を書くのと並行して「口頭和訳+音読」で英文を以下のように習得していきます(詳しくは下記)。
【1日「3回和訳+7回音読」×7日】
②習得するとは:「スラスラ和訳できる+90%の理解度で分速150ワード以上で音読・黙読できる」ようにすることです。
③週5英文以上習得する:週5英文を習得しても、1冊100英文習得するのに20週間(5ヶ月)掛かりますから、最低5英文、できれば8~10英文を習得していきます。高2なら5英文でも構いません。
(7)英文を2ヶ月以上復習する
いったん習得してスラスラ和訳でき、スラスラ読めるようにしても、復習しなければ忘れて、入試では使えません。
2ヶ月以上復習すれば、長期記憶に入り、数ヶ月~数年以上忘れず、入試で使える知識になります。
【1レッスン当たり1日7分(2回口頭和訳+5回音読)×週2回×2ヶ月以上】
3.2.英文解釈書の英文の具体的音読法
【「基礎英文解釈の技術100」の英文の音読法】
(1)1週間で口頭和訳約20回、音読約50回で英文を習得する
【1日「3回口頭和訳+7回音読」×7日】
(2)最初の4日は1文ずつ
【「1文ずつ3回英文をスラッシュ訳で口頭で和訳する⇒英文全体終わり⇒1文ずつ7回音読する⇒英文全体」×4日】
①1文ずつ行う理由:英文全体を通して「和訳+音読」してもなかなかスラスラ「和訳+音読」できるようになりませんが、1文ずつ行えばすぐにスラスラ「和訳+音読」できるようになるからです。
②達成目標:「英文全体を通してスラスラ和訳できる+ゆっくり読めば1回で90%の理解度で音読できる」ようになったら②へ。
③「90%の理解度」とは:「英語としては完全に意味が分かる状態」のこと。
これは「頭の中でスラッシュ訳の日本語訳を思い浮かべながら音読する」ことを50回ほど続ければ(1日7回音読×7日)達成できます。「90%の理解度」について詳しくはこちら。
④意味を思い浮かべなければ音読の意味はない:音読の時、意味をしっかり考えている人は少ない。だが、意味を考えずに英文を読んで、何の意味があるのでしょうか。
ほとんど効果は期待できません。意味が分かるようにはならないのです。よってきちんと意味を思い浮かべながら音読すること。
(3)次の3日は英文全体
【「英文全体を通して1回口頭和訳⇒英文全体を通して7回音読」×3日】
①達成目標:「英文全体を通してスラスラ和訳できる+90%の理解度でスラスラ音読できる」ようになったら、次の英文に入ります。
②日数は目安:スラスラできるようになれば2日でもOKだし、ならなければ4~7日と続けます。
(4)2ヶ月復習
いったん習得してスラスラ和訳でき、スラスラ読めるようにしても、復習しなければ忘れて、入試では使えません。よって復習して長期記憶に入れる必要があります。
【1レッスン当たり1日7分(2回口頭和訳+5回音読)×週2回×2ヶ月以上】
このように2ヶ月以上復習したら、長期記憶に入り、数ヶ月~数年以上忘れなくなり、入試で使えるようになります。
4.オススメ英文解釈書
4.1.オススメ英文解釈書
英文解釈書には優れた教材が多いのですが、中でも「英文解釈の技術」シリーズが一番オススメです。
難解な文法事項が網羅され、1レッスン見開き2ページで完結するため見やすくやりやすく、また、英文解釈書にしては珍しくCDも付いて、音読もやりやすいからです。
ただ、個々の英語力・学年・デザインの好み等によって選ぶべき教材は違って当たり前なので、Amazonで評価を読み、書店で自分が実際に見て選ぶと良いでしょう。
4.2.基礎的英文解釈書:中3~高1レベルからセンター試験レベルに引き上げる教材
ほとんどの英文解釈書は高校英文法を前提にしているので、高1の初めか途中から取り組むと良い。
「超入門英文解釈の技術60」「入門英文解釈の技術70」(桐原書店)
「肘井学の 読解のための英文法が面白いほどわかる本」(角川)
「英文読解入門基本はここだ!」(西きょうじ著、代々木)
「英文解釈教室 入門編」(伊藤和夫著、研究社)
基礎的英文解釈書を習得し終わったら、中級英文解釈書を始めます。中級英文解釈書を1年生のうちに終わらせておけば、かなり有利になります。
4.3.中級英文解釈書:高2~センター試験レベルから難関大学レベルに引き上げる教材
「基礎英文解釈の技術100」(桐原書店)
「ビジュアル英文解釈 (Part1)」(伊藤和夫著、駿台)
「英文解釈教室 基礎編」(伊藤和夫著、研究社)
「基礎英文問題精講」(中原道喜著、旺文社)
中級英文解釈書を習得し終わったら、難関大学レベル(河合塾偏差値60~65前後)の英文が読めるようになります。
中級英文解釈書終了後、上級英文解釈書を始めます。上級英文解釈書は、できれば2年生のうちに終わらせておきたいところです。
4.3.上級英文解釈書:難関大学レベルから超難関大学レベルに引き上げる教材
「英文解釈の技術100」(桐原書店))
「英文解釈教室」(伊藤和夫著、研究社)
「ビジュアル英文解釈 (Part2)」(伊藤和夫著、駿台)
「英文読解の透視図」(研究社)
「ポレポレ英文読解プロセス50」(西きょうじ著、代々木)
「基本からわかる英語リーディング教本」(薬袋善郎著、研究社)
「横山雅彦の英語長文がロジカルに読める本」(中経出版)
「構文把握のプラチカ―英文解釈」(河合)
上級英文解釈書を習得し終わったら、超難関大学レベル(河合塾偏差値65以上、早慶上智大、東大京大レベル)の英文が読めるようになります。
以上を終了してセンター試験過去問で160点以上、もしくは、偏差値65以上になったら、英語長文問題集に着手します。
上記で偏差値65未満なら、まだ基礎力が不足しているので、学校の英語長文教科書を「スラスラ訳せる+スラスラ音読できる」ようにし、英語表現教科書の例文暗記し、英文法問題集1冊・英単語集2冊・英熟語集1冊を暗記し、英文解釈書2冊を習得します。
【最後に】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
英文解釈は英語で最も重要な勉強です。学校の授業と並行して、ぜひ取り組んで下さい。