日本史の論述対策(4)論述の書き方と習得法

【日本史の論述対策】シリーズでは、2次試験に日本史の論述問題がある国公立大志望の受験生を対象に、共通テスト、論述問題で合格点を取るための暗記戦略について書いています。

このページは、論述の書き方と習得法についてです。

論述問題がある難関私立大志望生にも、このページの内容は役立つでしょう。

1.論述の書き方と習得法

1.1.論述の書き方

以下は過去問でも論述問題集でも同じです。

【論述の書き方と習得法】

(1)論述を書く

 ①テーマと出題意図の把握:設問・歴史に関する文章(リード文)・史料・資料等を数回よく読み、テーマ出題意図をしっかり把握し、下線を引いたり、丸で囲い、構成メモ(箇条書き等の下書き・目次・設計図:詳細は後述)に書いておきます。

 論述問題では出題意図を把握し、それに答えることが求められますが、外す人が多いので、要注意です。

 ※テーマ:どういう歴史用語についての出題か。例えば、摂関政治、院政、荘園、太閤検地など。

 ※出題意図:その問題は何を書けと要求しているのか。例えば、時代背景、因果関係、主要人物、経過、後代への影響、特徴、比較、意義などのうちどれか。

 ②キーワードを列挙:キーワード(答案に入れるべき歴史用語)を設問から考え、思い出せる限り書き出します。

 キーワードは以下のように5W1Hを考えると漏れがなくなります。

【5W1H:when(いつ:時代の特定)、where(どこで:場所の限定)、who(誰が:事象の主体)、what(何を:出題意図に応じて特徴・比較・意義など)、why(なぜ:原因と結果・背景)、how(どのように:経過・影響)】

 ③教科書を参照する:論述を書くときに知識の問題がない受験生はほとんどいないので、キーワードを思いつかなければ、教科書を参照しても構いません。というより、参照した方が良いです。自分の頭を使って調べ、書くことで、歴史の流れの理解と暗記が進むからです。

 過去問を解くときに参照した場合、教科書の該当箇所に下線を引いて、「東大2021年」などと書いておきます。こうすることで、志望校入試で、教科書のどういう内容が問われるかが分かるようになります。

 参照する際、教科書を書き写すのではなく、ここだと思う箇所を見つけたら、暗記して、教科書を見ずに論述を書きます。こうすることで、少しでも内容を頭に入れることができます。

 ④構成メモにまとめる:論述に入れるべきキーワードを、表形式や箇条書きの「構成メモ(設計図)」にまとめます。これをもとに論述を書きます。

 ⑤論述を書く:構成メモを文章化して下書きを書き、清書して論述を書きます。

 ただし、書き方が全く分からなかったり、時間がかかるなら、初期には、構成メモだけで、論述は省略してもOKです。模範解答を100以上暗記した頃からは論述を書きます。自分で書かないと上達しません。

 ⑥時間:以上を、大論述(300~600字前後)で約15~20分、小論述(50~200字前後)で約10~15分で終えるようにします。

 論述の模範解答を100~200問暗記するのが最初の目標なので、論述問題対策初期には「自力で書く」のにあまり時間を使わないようにします。低レベルの論述を100問書いても、書きっぱなしでは、論述を書けるようにはなりません。

(2)自己採点・自己添削をする

 ①解答・解説を読んで理解する:解答・解説と設問を数回読んで、自分の論述について「出題意図と合致しているか」「書き漏れたキーワード(解答に必須の歴史用語)は何か」、解答について「なぜその解答が合格答案なのか」「どういう文章構成か」「キーワードは何か」「どうすれば自分がそのような答案が書けるようになるのか」を理解・検討します。

 理解できないときは教科書を適宜参照します。

 ②キーワードに印:論述問題には必ず、採点基準となる(論述に必ず入れるべき)キーワードがあります。それが模範解答や「採点基準」に書かれていますから、解説を参考に、解答・採点基準中のキーワードに印を付け、なぜそれを入れる必要があるかを考えます。

 ③自己採点・自己添削:自分のキーワード・構想メモ・論述を自己採点・自己添削します。

 キーワードがそろっているかや、特に「出題意図」に合致していたかどうかをチェックします。出題意図を外せば、いくら知識があっても合格答案は書けませんから、これは非常に重要です。

 外していた場合は、なぜかを考え、どこを読み落としたのかを特定します。

 ④教科書を参照する:自分が書き漏らしたキーワードがある場合、教科書を読んで、出題テーマや出題意図との関係でどう記述されているかを理解します。

 そして、論述を書く際に必要な内容・キーワードに下線を引き、「東大2021年」などと書いておきます。

 ⑤清書する:自分の最初の論述解答を、解答や解説をもとに添削した後、それを清書し、模範解答と遜色ない論述に仕上げます。

 自信があれば、これを暗記用に使うのもオススメです。自分の文章の方が暗記しやすいからです。

 ⑥日本史まとめ帳にまとめる:過去問を解き、自己添削し、清書する過程で、過去問頻出テーマの歴史の流れ・俯瞰的知識の理解・暗記が不十分な場合、関連事項も含めて日本史まとめ帳にまとめるようにします。書き方は上述。

 ⑦過去問まとめ帳:過去問の場合、問題を解いたら、必ず、傾向と対策を過去問まとめ帳にまとめます。書き方は下記参照。

(3)模範解答を暗記する

 ①模範解答の暗記法:【1日10回音読×10日】

 例えば400字の論述なら1分で1回読めます。「1日400字1つ×10回」=10分。1日に30分使える場合は、400字の模範解答を10日で3つ暗記できます。

 ②設問・解説を読む:毎日模範解答を音読する前に、設問・歴史に関する文章(リード文)・史料・資料・解説等を1~3回黙読して、出題意図・解説を理解します。

 どういう問題(出題意図)への解答かを意識しなければ意味がないからです。

 ③暗記する模範解答の量:多ければ多いほど良いです。第一目標は、志望校の過去問を10~20年分、論述問題集1冊、合計100~200問です。

 300問以上暗記すれば、論述構成法をかなり体得し、主な歴史の流れの多くを暗記することができます。

 ④復習:1回暗記しても、復習しなければ数週間で忘れてしまいますから、必ず復習して入試まで記憶を維持します。

 復習は、毎週、既習の模範解答全てを【テスト(設問を読んで模範解答を言ってみる)⇒スラスラ言えたらok、言えなかったら「10回音読」×3日】のようにします。

(4)同じ問題を3回解く:上述。

(5)添削してもらう:上述。

(6)教科書を週1周読み、歴史の流れを日本史まとめ帳にまとめる:上述。

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1.2.模範解答か自作解答か

「模範解答を暗記する」には2つの方法があります。

(1)模範解答をそのまま暗記する:模範解答は質が保証されていますから、最初は模範解答を覚えるのが安心でしょう。

(2)自分の書いた解答を暗記する:これは私が採っていた方法です。他人の書いた文章はよそよそしくしっくり来ず、暗記しにくかったので、上記のように自分で書き、自己添削し、模範解答・解説・採点基準を見て書き直し、清書した解答を覚えていました。

 ただし、自分の解答に自信がない人、記述力が低いと自覚している人は、無理せず、模範解答を暗記します。

 過去問や論述問題集の自作解答を書いたものは、復習しやすいように「自作解答集」としてまとめておきます。自作解答集の作り方は【日本史の論述対策(5)自作解答集の作り方】参照。

論述問題780題を頭に叩き込んだ

ブログ「一橋大学合格体験記:世界史論述勉強法」より

論述で問われる観点は大体決まっています。私は河合塾の論述用テキストを用いて、そこに載っている小論述240題ぐらいと、講師がプリントでくれる追加小論述240題ぐらい、大論述(400~600)を300題ぐらい頭に叩き込みました。すべていろんな大学の過去問です。

ここまですれば何を書けばいいかが分かってきます。聞き方が違っても、答えるところは一緒であることが多いです。

よく考えれば、当たり前なんですが、教科書から逸脱した範囲は、論述ではほぼ出ません。一橋の大論述は、400字なのですが、私は小論述を組み合わせて解答を作り上げるようにしていました。

何度も言いますが大事なのは暗記です。暗記した知識をどういう風に使って点を稼ぐか、という点のみに頭を使います。知識を絞り出せなければ、手も足もでません。ですから、できるだけ数多くの小論述、問題に当たり、自分にストックしていきましょう。 

2.構想メモの書き方

例えば、以下のような感じです。

「構想メモ」の一番上に、テーマと出題意図を書いて、忘れないようにします。書いているうちに出題意図から外れていく人が多いので、要注意です。 

【設問】 【構成メモ】
五箇条の御誓文外交的な意義を100字以内で書け。 (テーマ)五箇条の御誓文、(出題意図)外交的な意義。
御誓文で公議世論の尊重と開国和親などの国策が示された。
江戸城が皇居とされて国内統一が進んだ。
それらにより、王政復古と天皇の外交権掌握の実現がより印象付けられた。
以上から、新政府は日本の正統政府として国際的に承認された。

段階式 日本史論述のトレーニング」(Z会)には構成メモが書かれ、「採点基準」も構成メモとして使えます。

「“考える”日本史論述」(河合塾)と「日本史論述研究」(駿台)の採点基準は構成メモとして使えます。参考にして下さい。

3.過去問まとめ帳の書き方

過去問まとめ帳は、ルーズリーフに縦線を引き、以下のような感じで書いていきます。

【大学、年度】 【傾向と対策】
16年○○大過去問、大問1傾向と対策。 金本位制を目指した理由・達成過程、金輸出再禁止の理由、300字以内、因果関係、経過の知識が必要。政治・経済史。キーワードが半分しか書けなかった。
対策:教科書範囲内の知識でOKなので、教科書を10周以上読む。模範解答の暗記を200以上暗記する。

具体的には、以下をチェックし、まとめます。

(1)問題形式:論述の長さ、資料・史料・統計の有無、問題数、時間、用語を問う小問もあるか。

(2)内容の傾向:難易度、頻出分野(政治史・社会史・経済史・文化史等)・時代・テーマ。

(3)どういう知識が必要か用語暗記でOKなのか、歴史の流れの知識も必要か。教科書で足りるのか。

(4)同じ内容:同じ大学・学部で、同じ(似た)テーマ・題材が何度も出ていないか。

(5)対策:以上の傾向把握をもとに対策を書きます。例えば、志望校の過去問で「近世・近代の経済史」の出題が多い場合、近世から暗記を始める、経済史をしっかり暗記するなど。

【文章が書けるようになりました】

Fさん(高校1年生、千葉県)

この3ヶ月ほど、200字意見文長文問題要約、漢字暗記、語彙集暗記など、国語を毎日勉強しています。

そのおかげで、最近は、読解問題が解けるようになったのはももちろんなのですが、短時間で文章が書けるようになりました。今回の中間テストでは、現代文で91点(平均70点:学年1位)を取ることができました。

国語だけでなく、日本史の論述問題も、クラスのほとんどが書けなかった中、授業内に書き終え、かつ満点の回答をすることが出来、98点(平均79点:学年1位)を取れました。

もっと実力を上げていきたいのでこれからも毎日勉強します。

4.過去問

4.1.過去問の年度数

解く過去問の年度数は多ければ多いほど良いです。中古本も含めて、手に入るだけ、10~20年分以上手に入れ、解き、習得します。

解く際は、最新年度から解き、さかのぼっていきます。年度が新しいほど、自分が受けるときの問題に傾向が近い可能性が高いからです。

4.2.過去問を解き始める時期

基本的には、共通テスト(過去問・予想問題集)で8割以上取れるようになってから、論述の過去問を解き始めます。十分な知識が無ければ論述は書けないからです。

ただ、3年の夏休みには3年分ほど解いて傾向を見て、以後の勉強の指針にします。

それ以後は、遅くても10月頃から本格的な論述問題対策を始め、週1年分は解き、模範解答を暗記していきます。

共通テスト後は、毎日1年分など解き、模範解答を暗記していきます。

5.オススメ論述問題集

過去問を手に入るだけ10~20年分解き、模範解答を覚えたら、次は過去問と傾向が似た論述問題集、他大学の過去問を探し、100~200問(2~3冊)以上の解答を、同様にして覚えます。そのくらい覚えれば、論述問題に出やすいテーマはだいたい押さえることができます。

その後は、覚えた解答を忘れないように復習しながら、覚える解答例を増やすだけです。

「“考える”日本史論述―「覚える」から「理解する」へ」(河合塾)
「日本史論述演習141」(代ゼミ)
日本史の論点」(駿台)
書いてまとめる日本史―日本史短文論述練習帳」(石川晶康著、河合塾)
「東大合格への日本史」(データハウス)
日本史論述問題集」(山川出版社)
日本史論述研究―実戦と分析」(駿台)
段階式 日本史論述のトレーニング」(Z会)
論考テーマ型日本史論述明快講義」(旺文社)
大学入試 全レベル問題集 日本史B 5 国公立大レベル」(旺文社)

「頻出問題を丸暗記する」

一橋大学合格者

日本史の論述問題の中には頻繁に出題される「頻出問題」というのがあります。この頻出問題を丸暗記しましょう。この頻出問題の解答は他の問題の解答に役立つことが多いです。頻出問題の解答の一部が他の問題の解答になったりすることがあるのです!

参考書や過去問をやっていて2回以上出てきた問題は暗記してしまいましょう!

6.終わりに

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

皆さんが日本史を得意科目にするのに、この記事が参考になれば幸いです。

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