全ての科目で、勉強には「理解」と「暗記」が必要です。日本史でも、ただ暗記してもダメで、理解して暗記する必要があります。
また、暗記には、方法(暗記法)と段階があります。暗記法は他のページに書いていますので、このページでは暗記の段階、そして日本史における理解とは何かについて書いていきます。
1.歴史を「理解する」とはどういうことか
1.1.難関大合格には理解が必須
日本史学習では、単に用語を暗記するだけでは受かりません。歴史の流れを「理解」する必要があります。暗記と理解は両輪なのです。
特に、論述問題や難関私大の問題では、この「理解」が合否を分けます。また、理解して覚えないと忘れやすい、という意味で、理解と暗記は一体です。
ではその「理解」とはどういうことでしょうか。
1.2.理解とは定義の暗記と知識の整理
日本史では、用語で言うと、センター試験レベルや国公立二次レベルで約4000語を暗記する必要があります。しかもそれを整理して覚える必要があります。「知識を整理して覚えている」ことを「歴史を理解する」と言います。
「整理して覚えている」とは、以下の3つのことを指します。
(1)用語の定義を暗記していて、他の用語との意味内容の違いを説明できる
現代文でもそうですが、用語の定義が曖昧だと、意味内容の理解も曖昧になります。しっかり理解するには用語の定義を知っていることは不可欠です。
例えば、第二次世界大戦後の「農地改革」であれば、農地改革の定義「第二次世界大戦後、占領軍(GHQ)の強力な指導によって行われた日本の農地制度の改革で、地主制の解体、小作人の解放(=自作農創設)、不在地主の一掃を主な内容とした」を言えて、GHQ・小作人・不在地主の定義、第一次と第二次農地改革の違い、法律や首相名・執行機関名も言えること。
これが歴史理解の基礎になります。
定義の暗記には「日本史用語集」(山川出版社)が最も有用です。随時辞書のように引きましょう。
(2)用語と用語を位置づけ、関連づける
数千もの用語を、年表のタテの大きな流れ(原始-古墳-飛鳥-奈良-平安-鎌倉~)、タテのより小さな流れ(天皇・将軍・権力者の名前)、文化史・外交史・経済史などのタテの個別の流れ、時代ごとのヨコの歴史(各時代の他の出来事との因果関係・影響関係)などに位置づけ、関連づけて覚え、言えるようにします。
これには教科書巻末の年表や以下のような書籍の図表を暗記することが必要です。
「時代と流れで覚える! 日本史B用語」(165ページ、文英堂)
「日本史B表解演習書」(金谷俊一郎著、東進)
「流れがわかる日本史Bノート」(山川出版社)
年表や年号の暗記法についてはこちらに書いています。
(3)流れを理解し、俯瞰的知識を暗記する
よく「歴史の流れを理解せよ」と言われます。「流れを理解」するとは、出来事の因果関係を含む俯瞰的知識を理解し暗記するという意味です。
因果関係とは、例えば、応仁の乱の場合、原因、時代背景、主要登場人物、戦争の経過・結果・影響のことで、これらを講義系参考書や教科書に書いてある範囲でピックアップし、暗記し、スラスラと言える状態にすれば、応仁の乱の流れを理解したことになります。
俯瞰的知識とは、出来事・文化・法制度などの「目的・原因・理由・背景、経過、影響・結果、比較・特徴・意義」などの、大局的観点からのまとめを指します。
例えば、
御成敗式目の目的・制定者・時代背景・結果・前後の時代の法制度との比較・特徴・意義、
応仁の乱の原因・経過・結果・影響・主要人物、
元寇の背景・経過・結果・影響・主要人物、
平安時代と鎌倉時代の仏教の比較・特徴、遣唐使の意義
などを、教科書や講義系参考書から読み取り、暗記し、説明できるようにします。また、日本史まとめノートにまとめます。
なぜこのように整理して覚える必要があるのかというと、難関大学の論述問題では、単純な用語の定義より、俯瞰的知識(歴史の理解)が問題に出るからです。また、理解しないと覚えにくく、整理して覚えないと頭が混乱して、点が取れないからです。
1.3.日本史用語の整理法
こうして整理して覚えることは、一問一答問題集で用語だけを暗記していてもできません。具体的には以下のようにすると記憶が整理されます。
(1)用語の定義を暗記する1:「日本史用語集」
用語の定義は日本史の全ての基礎、基盤なので、正確に暗記します。これには、用語の意味内容が分からないときに、「日本史用語集」(山川出版社)などで確認し、定義を教科書などにメモし、覚える方法が有効です。
(2)用語の定義を暗記する2:逆一問一答
これは、一問一答問題集で用語を一通り暗記した後、今度は逆に、答えの用語を見て、用語の定義や問題文の関連事項を言えるようにする方法です。
例えば、一問一答問題集で「質問:皇室に関する法令を(★★★)という。答え:皇室典範」という問題があったとして、穴埋めができるだけでなく、「皇室典範」という答えを見て、その内容(皇室に関する法令)を言えるようにします。
(3)流れを理解する1:マンガ
大きな流れをマンガを読んで暗記するのは有効です。時代の大きな流れと主要人物・事件を効率的に理解し暗記できます。
(4)流れを理解する2:年表
通史暗記の最中か後に、教科書の巻末などにある10ページ程度の年表を丸暗記します。そうすることで、流れの理解と暗記が確かなものになります。
(5)流れを理解する3:年表整理ノート
通史暗記後、年表の情報量を拡大した、以下のような整理ノートの表を理解し(=用語の定義や他の用語との関連を言えるようにする)、暗記すると、通史暗記で覚えた知識を頭の中できちんと整理して覚え直せます。
「時代と流れで覚える! 日本史B用語」(165ページ、文英堂)
「日本史B表解演習書」(金谷俊一郎著、東進)
「流れがわかる日本史Bノート」(山川出版社)
(6)流れを理解する4:問題集
通史暗記後、問題集を解き、解説を読むことで更に情報を整理し、関連づけることができます。
(7)俯瞰的知識を理解する1:講義系参考書
教科書や講義系参考書を読むときは流れや俯瞰的知識(目的・原因・理由・背景、経過、影響・結果、比較・特徴・意義)に注意し、それにマーカーを付け、暗記します。これをすることで理解と記憶が進み、テストの点が全然違ってきます。
(8)俯瞰的知識を理解する2:論述問題集
論述問題集や過去問の論述問題の解説を理解し、解答を暗記することで、俯瞰的知識を最も良く習得できます。
(9)俯瞰的知識を理解する3:「日本史まとめ帳」
通史暗記後、問題集や過去問を解く過程で新たに理解した流れ・関係・俯瞰的知識を日本史まとめ帳にまとめていくのは大変良い方法です。
まとめ方は、ルーズリーフを使い、時代ごとに紙を分け、真ん中に傍線を引き、右に理解した内容を書き、左にその理解した内容が答えになるような質問を考え、書きます。
難関国公立大学に合格したいなら、このような勉強法を取る必要があります。
2.暗記の段階
用語暗記には以下の3段階あります。
(1)穴埋め問題集や一問一答問題集で用語を言える、書ける
これは一番記憶が不確かで忘れやすいですが、短期間で暗記できるので、最初にこれをします。
(2)用語の定義・内容を言える
例えば「桂・タフト協定」を穴埋めで言えても、協定の内容を自力で言えなかったら、記憶が浅くて忘れやすいし、問題を解くことは難しいので、定義・内容まで覚えるべきです。
(3)用語の関連情報を言える
これは、例えば、「日露戦争」について、教科書に載っている範囲で、「時代背景・起こった理由・経過・結果・影響・日本にとっての意義・年号・関連人物(=俯瞰的知識)」を、自力で説明できる状態にすることです。関連情報を言えなければ、知識がバラバラで忘れやすく、理解もできていないのです。論述がある場合は必ず、ここまで覚えましょう。
【最後に】
日本史を得意科目にするには「理解」は必須です。理解し関連づけて覚えていきましょう。