自分が受験するときの世界史の論述テーマは「初見」です。基本的には、過去問や論述問題集に載っていないテーマになると思われます。この際には、記述力を前提に、そのテーマに関する「知識」があるかないかで、点数が大きく違ってきます。「知識」には2つあり、それは通史の知識と論述に必要な知識(俯瞰的知識)です。これをいかに多く暗記するかが合否を分けます。
このページでは世界史論述に必要となる2つの要素、「知識(通史と俯瞰的知識)」と「記述力」について書いていきます。
1.受験本番の論述テーマは「初見」
1.1.論述テーマは無限
世界史論述のテーマは無限です。同じ「帝国主義」についての論述問題でも、「イギリス、アジア、帝国主義」と、「オランダ、アジア、帝国主義」では書く内容が違います。
また、「帝国主義が起こった背景と経過と結果(因果関係)」と「帝国主義の意義」「帝国主義と産業革命の関係」では書く内容・キーワードが違います。
このような無限に多様な論述テーマを全て網羅した問題集はありませんし、過去問や問題集を何冊習得しようが、それと自分の受験本番のテーマとが一致する確率は非常に低いでしょう。
つまり、自分が受験するときの論述のテーマは「初見(初めて見る)」なのです。
1.2.初見のテーマで合格点を取る方法
では、どんな「初見のテーマ」でも「合格点を取れる論述」が書けるようにするにはどうすればいいのでしょうか?
それには以下の3つが必要です。
(1)通史の暗記
(2)俯瞰的知識(論述に必要な知識)の暗記
(3)記述力:文章力と論述構成力
以下ではこの3つを順番に書いていきます。
2.通史の暗記
2.1.教科書類
世界史の受験勉強は、最初はみんな、通史の暗記から入ります。通史暗記は教科書類と用語暗記用問題集で行います。
「教科書類」とは、教科書や、教科書の内容が分かりやすく書かれた参考書のことです。例えば以下のような教科書・参考書がよく使われています。
「詳説世界史B」(462ページ、山川出版社)
「世界史B」(454ページ、東京書籍)
「タテから見る世界史 パワーアップ版」(284ページ、学研)
「教科書よりやさしい世界史」(288ページ、旺文社)
「共通テスト 要点はココだ! 世界史B」(327ページ、中経出版)
「共通テストのツボ世界史」(446ページ、桐原書店)
「きめる!共通テスト世界史」(488ページ、学研)
「みんなの共通テスト教科書」(512ページ、旺文社)
「共通テスト 世界史Bの点数が面白いほどとれる本」(543ページ、角川)
「神余のパノラマ世界史」(全2巻、562ページ、学研)
「ナビゲーター世界史B」(全4巻、1057ページ、山川出版社)
「荒巻の新世界史の見取り図」(全3巻、1256ページ、ナガセ)
「青木裕司 世界史B講義の実況中継」(全4巻、1849ページ、語学春秋社)
基本的には学校で使っている教科書が一番オススメです。教科書が分かりにくいときに参考書を参照します。
学校の教科書がオススメなのは、授業やテスト前の勉強で何度も見ていて覚えやすいためで、教科書が重要なのは、共通テストと国公立大学の論述問題の出典が「教科書」だからです。教科書さえ丸暗記していれば、共通テストでも論述でも合格点が取れます。
※ここでは「合格点を取れる論述」を書けるようにするための「知識」についてだけ書いています。「記述力」や「出題意図」を読み取る読解力は、別途鍛える必要があります。
2.2.教科書類を丸暗記する
教科書を暗記せよ、と多くの教師が言い、論述問題集、過去問にも書かれていますが、具体的にどうやったら教科書を暗記できるかを教えてくれる人はあまりいないでしょう。
創賢塾では、誰でもできる「教科書類の丸暗記法」を教えています。
やり方は単純で、「教科書を4~10パートに分けて、それぞれ10~20回音読する」だけです。
世界史の教科書を10回読むなど、ほとんどの人がしたことがないでしょうから、分からないかもしれませんが、これでほとんどの高校生が教科書を9割以上暗記できます。
「9割暗記」というのは、見出しを見てその項目に出てくる用語の9割以上を言える、用語の説明ができる、用語同士の関連(因果関係・地域同士の影響関係・意義・特徴)を9割がた説明できる、という意味です。
これはもちろん教科書でなくても講義系参考書でも可能です。さらに、理科でも英語でも古文でも、教科書やテキストの暗記が必要な科目では素晴らしく効率的に暗記できます。
詳しい教科書丸暗記法はこちらに書いています。
「部屋中歩き回って音読し、社会の教科書2冊を丸暗記」
ブログ「音読のすすめ」より
”音読”、まさに合理的な勉強方法です。私も若いとき自分の部屋で眠くならないために本を持って声を出して読んで部屋中歩き回った思い出があります。こうすると頭の中にしっかり入って眠気防止の一石二鳥。
中3の受験のときはこれで社会の教科書を2冊(中2と中3)を丸暗記しました。
2.3.用語暗記用問題集
用語暗記用問題集とは、一問一答問題集や穴埋め問題集のような「用語」を暗記するための問題集です。以下のようなものがよく使われています。自分の志望大学やレイアウトをよく吟味して選んで下さい。
「スピードマスター世界史問題集―世界史B」(約1800語、123ページ、山川出版社)
「共通テスト攻略よくでる一問一答世界史」(約2,850語、236ページ、山川出版社)
「時代と流れで覚える! 世界史B用語」(約3000語、192ページ、文英堂)
「解決! 共通テスト世界史B」(約3000語、320ページ、Z会)
「聴くだけ世界史 一問一答」(約3200問、CD付き、学研)
「入試に出る 世界史B 一問一答」(4000語、400ページ、Z会)
「世界史トータルナビ INPUT&OUTPUT800」(400ページ、学研)
「山川 一問一答世界史」(約4700問、288ページ、山川出版社)
個人的には「解決! 共通テスト世界史B」か山川の一問一答問題集(「共通テスト攻略よくでる一問一答世界史」「山川 一問一答世界史」)がオススメです。
2.4.用語暗記用問題集の暗記
教科書類を音読して暗記していっても、細かい用語を暗記できているかは分からないので、平行して、一問一答問題集などの用語暗記用問題集を覚えていきます。
暗記の仕方は単純で、教科書類と同じパートをひたすら繰り返します。15~20周すれば誰でも暗記できます。
ただ、重要なのはいったん暗記したあとです。例えば、一問一答問題集の30ページ分を暗記するのは難しくありませんが、暗記したあとに復習しなければ、どんどん忘れていきます。よって、毎週日曜日などを「復習日」にして、2~3ヶ月は復習を続けます。そうすれば完全な長期記憶に入り、常識になり、忘れなくなります。
これは教科書類の暗記でも同じです。暗記したパートも、毎週1~2回、黙読を続け、記憶の保持に努めます。
2.5.暗記に最適な「世界史はこう整理してこう暗記する!」
通常の一問一答問題集や穴埋め問題集は、ひたすら繰り返して暗記するしかありませんが、以下に紹介する暗記本は、年号のゴロ暗記法や、主に「頭文字暗記法」を使った王朝名などの暗記法を満載した良本です。
「世界史はこう整理してこう暗記する!」(366ページ、文英堂)
「頭文字暗記法」とは、例えば、中国の王朝名を暗記する際、「もしもし亀よ」のリズムで【イン、シュウ、シン、カン、シン、カン、シン、ズイ、トウ、ソウ、ゲン、ミン、シン、チュウ、チュウ(殷、周、秦、前漢、新、後漢、晋、隋、唐、宋、元、明、清、中華民国、中華人民共和国)】のように唱えて暗記していく方法です。すぐに覚えられます。
2.6.共通テスト過去問8割超えたら論述対策へ
共通テスト過去問や共通テスト模試で8割取れないうちは、知識不足で論述は書けません。8割以上安定して取れるようになったら、論述対策に入ります。
ただ、通史の暗記が終わらなくても、遅くとも夏休みくらいから論述の対策を始めたいものです。論述対策には時間がかかるからです。通史の暗記と論述対策を平行するのは難しいですが、合格するにはやるしかありません。
よって、できる限り、通史の暗記を8月くらいまでに目途を付けられるよう、頑張って下さい。
創賢塾のホームページに書かれた勉強法をいち早く習得したい高校生のために、自宅で受講できる【5教科の受験勉強法を習得する3ヶ月自宅集中セミナー】【長期勉強法コース】を開講しています。【オンライン講座・セミナー一覧】はこちら。関心ある方はご参照ください。
3.俯瞰的知識の暗記
3.1.論述対策=俯瞰的知識の暗記
「俯瞰的知識」とは、「タテの歴史(流れ・因果関係)、ヨコの歴史(同時代の地域間の影響関係)、時代・指導者・文化の特徴、戦争・事件・宗教の意義」などを指します。
過去問を見てみれば分かりますが、論述問題では、用語の意味を問う問題以外は、ほとんどが俯瞰的知識を問う問題です。
よって、論述対策のメインは「俯瞰的知識の暗記」になります。
俯瞰的知識は、以下の4つの方法で暗記していきます。
3.2.俯瞰的知識の暗記(1)教科書類でタテの歴史を暗記する
教科書類は、通史の暗記では、教科書類の構成通り暗記していきますが、それが終わったら、今度は、タテの流れを暗記し直します。例えば、中国なら中国、アメリカならアメリカのタテの歴史をまとめて読むのです。
教科書類では、普通、各国・地域のタテの歴史はバラバラに出てきて、頭の中で流れがなかなかつかめません。タテの歴史をまとめて読むことで、タテの歴史が一本につながり、記憶がより強固になります。
このとき、事件の因果関係、他の地域との影響関係(ヨコの歴史)、時代・指導者・文化の特徴、戦争・事件・宗教の意義などの俯瞰的知識にも注目して、暗記していきます。
3.3.俯瞰的知識の暗記(2)参考書でヨコの歴史を暗記する
俯瞰的知識の中で、ヨコの歴史は教科書ではまとまっていないので、以下のような参考書で整理して暗記するのがオススメです。
「ヨコから見る世界史」(学研)
「タテ×ヨコから見る世界史問題集」(学研)
「タテヨコ総整理 世界史×文化史 集中講義12」(旺文社)
オススメは「ヨコから見る世界史」です。
3.4.俯瞰的知識の暗記(3)論述問題の模範解答を暗記する
「論述対策=俯瞰的知識の暗記」のメインは過去問と論述問題集の「模範解答と構成メモ」の暗記です。なぜなら、これらを理解して暗記すれば、論述力と俯瞰的知識の両方を効率よく習得できるからです。
「構想メモ」とは、答案に入れるべきキーワードを箇条書きし、整理しまとめた論述の設計図のことです。論述を書く際には、いきなり書き始めないで、構想メモを書くのがコツになります。
最初は志望校の過去問10年分と論述問題集1冊、その後は、時間が許す限り、過去問20~30年分、論述問題集数冊、志望校と似た大学の過去問などを入試まで暗記し続けます。
「模範解答と構成メモ」を暗記すれば、以下のようなたくさんの効果があります。
(1)傾向と対策:志望校の傾向と今の自分に足りない点が深く分かり、自分で適切な対策が立てられるようになる。
(2)論述構成法:模範解答を暗記することで、志望校の論述形式の「論述構成法」が身に付く。
(3)文章力:多くの論述問題の模範解答を暗記することで、その記述を使って論述が書けるようになり、文章力が上がる。
(4)俯瞰的知識:論述に必要な俯瞰的知識を効率的に身に付けられる。
(5)構想メモ:構成メモを多数読み、暗記することで、書き方を習得できる。
(6)慣れ:過去問形式の問題に慣れて、受験本番も落ち着いて受けることができる。
「論述問題780題を頭に叩き込んだ」
ブログ「一橋大学合格体験記:世界史論述勉強法」より
論述で問われる観点は大体決まっています。私は河合塾の論述用テキストを用いて、そこに載っている小論述240題ぐらいと、講師がプリントでくれる追加小論述240題ぐらい、大論述(400~600)を300題ぐらい頭に叩き込みました。すべていろんな大学の過去問です。
ここまですれば何を書けばいいか、が分かってきます。聞き方が違っても、答えるところは一緒であることが多いです。
よく考えれば、当たり前なんですが、教科書から逸脱した範囲は、論述ではほぼ出ません。一橋の大論述は、400字なのですが、私は小論述を組み合わせて解答を作り上げるようにしていました。
何度も言いますが大事なのは暗記です。暗記した知識をどういう風に使って点を稼ぐか、という点のみに頭を使います。知識を絞り出せなければ、手も足もでません。ですから、できるだけ数多くの小論述、問題に当たり、自分にストックしていきましょう。
3.5.オススメ論述問題集
論述問題集は、過去問に似た傾向の問題が多く収録された問題集を選びましょう。オススメは以下です。
「判る!解ける!書ける!世界史論述 」(約190問、河合塾)
この問題集は非常に良くできていて、ほとんどの例題が見開き2ページで完結し、「問題・出題意図・構成メモ・解説・模範解答」が見やすくまとまっています。この問題集の構成メモと模範解答を何度も読み、全部暗記すれば、構成メモと論述の書き方は大きく上達するでしょう。過去問の後の1冊目か2冊目としてオススメです。
「世界史論述練習帳new」(約320問、中谷臣著、パレード)
この問題集も非常に良くできていて、多くの問題が見開き2ページで完結し、「問題・構成メモ・解説・模範解答」が割と見やすくまとまっています。過去問の後の1冊目か2冊目としてオススメです。
この問題集の特長は、分かりやすい表形式の構成メモが多く掲載され、構成メモの書き方を習得するには最適であること、生徒のミスを集積した解答例を掲載して学習者に添削させることで「自己添削力」の練習ができること、「過程・経過・関連・影響・意義・特色を述べよ」「比較せよ」など、問題形式別に書き方の指南があること、巻末に約280問のミニ論述(60~120字)の問題と解答を載せ、俯瞰的知識をかなり網羅的に暗記できることなどです。
「世界史B論述問題が面白いほど解ける本」(約280問、中経出版)
この問題集は「構成メモ」がない代わり、全問に詳しい解説が付いています。上記2冊は、練習問題には解説がありません。解説がないと、自力で教科書類などを調べる時間が多く必要なので、これは大きな利点です。3~4冊目に適しています。
その他には以下があります。志望校の傾向と問題集の内容を検討し、適切なものを選びましょう。
「詳説世界史論述問題集」(約210問、山川出版社)
「世界史論述問題集―45か条の論題」(45問、駿台)
「段階式 世界史論述のトレーニング」(75問、Z会)
3.6.俯瞰的知識の暗記(4)俯瞰的知識を「世界史論述まとめ帳」にまとめる
自分が受ける実際の入試の「初見のテーマ」にも対処できるためには、「俯瞰的知識を網羅的に暗記する」しか方法はありません。
そして、「俯瞰的知識を網羅しているのは教科書類」ですから、上記のように、教科書類の暗記を入試まで続けます。
それに加えて、教科書類や過去問、論述問題集の解説に書かれた俯瞰的知識を「世界史論述まとめ帳」にまとめていきます。これは主に、志望校の過去問の傾向に合った俯瞰的知識をまとめます。例えば、「政治史の意義」がよく出される大学なら、「政治史の意義」を中心にまとめるなどです。
具体的には、ルーズルーフに縦線を引き、左に質問、右に答えを書きます。例えば、以下のような感じです。
【30年戦争の原因、参戦国、経過、結果を述べよ|①原因~~、②参戦国~~、③経過~~、④結果~~】
自分の頭と手を使ってまとめ(要約し)、暗記することで、俯瞰的知識を網羅的に暗記できるだけでなく、頭が整理でき、記憶が深くなり、記述力が驚くほどアップします。ぜひやってみて下さい。
4.記述力:文章力と論述構成力
4.1.論述の2つの壁:知識と記述力
世界史論述は、知識をある程度網羅的に暗記したあとは、「記述力」の問題になります。いくら知識があっても、記述力がなければ、まともな文章が書けず、合格レベルの答案が書けません。
世界史論述では、大部分の受験生が知識の問題で論述が書けませんが、しかし、受験終盤になって知識が十分になってきても、今度は記述力でつまずく人は多いのです。それを自覚している人は多いでしょうが、対策法を知っている人はほとんどいないので、実際には記述力を上げる勉強をしている人はマレです。
ここではその「記述力アップのための効率的トレーニング」を書いていきます。
4.2.文章力(日本語を書く力)
世界史論述における「記述力」には2つあり、一つは「文章力」、もう一つは「論述構成力」です。
世界史の論述問題を解くとき、キーワードが必要なだけ思い浮かんだとしても、なかなかスムーズに書けない人がいます。これは、世界史の問題という以前に「文章力」の問題です。
文章力が低い原因は、「日本語の文章の読書量・暗記量・書いた量」が少ないからなので、とにかく毎日、現代文の記述問題を解いたり、世界史論述の模範解答を読み、暗記し、論述を書くしかありません。
もう少し具体的に書くと、世界史では、教科書を何度も音読して暗記する、論述問題の解答を暗記する、論述を定期的に書く、添削を受ける、など、このページに書いている論述対策が役立ちます。
4.3.論述構成力
論述構成力とは、世界史の論述を書くとき、「最初に何を書き、次に何を書き、最後に何を書くか」という論述構成法が身に付いて、すらすらと書ける能力です。
世界史の論述では、構成法は、設問により様々なので、これは過去問や論述問題集に学ぶしかありません。
具体的には、論述問題の模範解答を何度も読み、暗記する、模範解答を書き写す、論述を書き、添削してもらう、などが有効です。
過去問の解き方・書き方・覚え方について、詳しくははこちらに、論述問題集の書き方・覚え方についてはこちらに、書いています。
【終わりに】
以上、このページでは、初見のテーマでもスムーズに書けるようになる方法について書きました。
皆さんのご参考になれば幸いです。
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