日本史を暗記するとき、各用語・人名をバラバラに覚えても成績はなかなか上がりません。用語同士の関係を暗記する必要があります。
「用語同士の関係を暗記する」とは、数千もの用語を、年表のタテの大きな流れ(原始-古墳-飛鳥-奈良-平安-鎌倉~)、タテのより小さな流れ(天皇・将軍・権力者の名前)、文化史・外交史・経済史などのタテの個別の流れ、時代ごとのヨコの歴史(各時代の他の出来事との因果関係・影響関係)などに位置づけ、関連づけて覚え、言えるようにするということです。
そのためには、教科書巻末の年表や年号、まとめの図表を暗記する必要があります。
このページでは年表・年号・図表の暗記法について書いていきます。
1.年表暗記法
1.1.年表を暗記する
できれば通史暗記中、それが無理でも通史暗記後、教科書の巻末にある8~10ページほどの年表(年号、天皇・将軍・首相名、政治・経済・社会の出来事、文化)を暗記していきます。年表暗記は無味乾燥ですが、効果抜群です。
私の生徒の一人は、最初この手間の掛かる暗記を(私が勧めても)いやがり、やっていませんでしたが、模試で並べ替え問題ができず、この年表暗記の重要性に気づいたため、自ら進んで暗記し始めました。
(1)年表暗記のメリット
年表暗記のメリットは、日本史の大きな流れを正確に暗記できる、知識が整理できる、センター試験や私大入試で頻出する「年代順並べ替え問題」で間違わなくなる、などです。
(2)暗記時期
年表に載っている権力者や出来事について知識がない段階で暗記しても無意味なので、年表暗記は、通史暗記中に、暗記をしている時代と同じ個所を並行して暗記していくか、通史暗記後に一気に暗記します。
(3)暗記の目標
教科書に載っている年号表の中で、年号から、最高権力者名と政治・経済・社会・文化の出来事名を言えるようにする。
(4)暗記量と暗記箇所
1週間で暗記する分量を決める。通史暗記中なら、その1週間に暗記するのと同じ時代範囲を暗記する。
(5)暗記にかかる時間の目安
何も知らない状態なら、年表8ページ合計約30時間、半分暗記していたら約15時間、7割暗記していたら約10時間です。
ここでは、通史暗記後、7割知っているとして、1日15分、6週間で暗記する場合を書いていきます。
1.2.教科書の年表を1日15分×6週間、合計10時間で暗記する方法
教科書年表暗記法
(1)最高権力者名を暗記する(7日で20周暗記=総計約15分)
①最高権力者名を暗記する:暗記するのは、まずは最重要部分、教科書本文に事績が出ている最高権力者(天皇・将軍・首相)名に印を付け、順番通り暗記する。
例えば、鎌倉・室町・江戸時代なら、将軍・執権名+教科書本文に事績が出ている天皇名、明治~昭和時代なら、首相名。
②暗記法:【「最高権力者名を暗唱できるまで順番に音読する=1日10回音読」×7日】
例えば、江戸時代の将軍名を暗記する場合、「家康、秀忠、家光、家綱、綱吉……」と、10回ほど音読して暗唱できるようにする。15人を一気に暗記するのは難しいので、3つに分けて、それぞれを「10回音読×7日」して暗記する。
③1日1.5ページ暗記:一度に半ページくらい暗記し、1日3セット1.5ページを暗記する。それを7~10日続けると、完全に暗記できる。
④復習:翌週次の1.5ページに移っても、既習部分の復習を続ける。暗唱して言えればOK、言えなければ暗記する。
(2)年号から名前・出来事を言えるようにする(7日で20周暗記=総計約85分)
①年表全部を暗記する:最高権力者名を1.5ページ分、一通り暗唱後、同じ日に、年号を見て権力者名と政治・経済・社会・文化の出来事を言えるようにする。
②暗記法:【「年号を見て、最高権力者名と政治・経済・社会・文化の出来事を言う⇒1.5ページ」×1日3周×7日】
③1日1.5ページ暗記:1日1.5ページを3周暗記し、それを7~10日続けると、完全に暗記できる。
④復習:翌週次の1.5ページに移っても、既習部分の復習を続ける。年号から権力者名等を言えればOK、言えなければ暗記する。
2.年号暗記法
2.1.年号暗記は必須
年号は暗記すべきです。直接問われることは少なくても、知っていれば、頭が整理でき、センター試験でも中堅私立大~早慶上智大でも大変役立ちます。
時期的には通史暗記後が良いでしょう。年号を覚える出来事の内容が分からず、年号と出来事名だけ覚えても意味がないからです。
2.2.オススメ年号暗記本
以下がオススメです。中でも「元祖 日本史の年代暗記法」は年号だけでなく、将軍や戦乱などのまとめも多く、最もオススメです。基本的にゴロ合わせなので、自分に合うゴロ本を暗記してください。
「元祖 日本史の年代暗記法」(旺文社)
「まんが必修年代暗記法日本史」(文英堂)
「高校100%丸暗記 日本史年代」(受験研究社))
「トマスの日本史-1000ダケヨ―日本史総合図解年表と年号暗記法」(聖文新社)
「新 日本史 頻出年代暗記」(学研教育出版)
2.3.「元祖 日本史の年代暗記法」の暗記
「元祖 日本史の年代暗記法」を例に、年号暗記本の具体的な暗記法を書いていきます。
(1)暗記の目標
全ての「ゴロ・年号・赤字」を即答できるようにする。
(2)1冊暗記するのにかかる時間の目安:約15時間
全てのゴロと年号を暗記するまでの時間は、年号と出来事名をほとんど知らない場合は約30時間、半分知っている場合は約15時間です(記憶力、知っている情報量により個人差があります)。以下の時間は半分知っている場合を書きます。
1日30分などと時間を決め、できるだけすき間時間を利用して、7日間同じ範囲を暗記し続けます。
(3)1週間で完全暗記する量を決める
年号と出来事名を半分知っている場合は約15時間で暗記できるので、毎日30分暗記すれば、30日、約4週間で終わります。
この本は約200ページあるので、4週間で暗記するには、週50ページ(約100年号)ずつ暗記することになります。以下は週50ページ暗記する場合を書きます。
(4)ゴロの自作:ゴロは自分が覚えにくいと思えば、自己流に変えて作り、暗記します。
例えば、「元祖 日本史の年代暗記法」で、「1401年、足利義満、明と国交を結ぶ」のゴロが「投資は一筋、遣明船」になっていますが、私には覚えにくいので、「投資を一筋、遣明船」にするなど(アルファベットのoオー、から)。
私はゴロの意味よりゴロの音(数字の0だと、レイ、ゼロ、オーなど)を重視して作ります。各自、自分が覚えやすいゴロを作っていったらよいと思います。
2.4.「元祖 日本史の年代暗記法」を「週4時間×4週間」で暗記する方法
「元祖 日本史の年代暗記法」暗記法
(1)第一パート(50ページ)を20周暗記:4時間弱
①1周目:見開き2ページを3周暗記:書いてあるゴロや自分で作ったゴロを8~10回音読し、暗唱できるようにする。次に、見開き2ページの赤字を赤シートを使って暗記する。以上2つを暗記したら、同じ見開き2ページを3~4周暗記し、いったん赤字を全て即答できるようにする。覚えるのは「年号・ゴロ・赤字全部」。
②2周目:50ページ分進めたら、最初に戻り、2周目暗記。暗記法は同じ。時間の限り周回する。
③テスト:5日目頃にテストをし、即答できるものは外し、即答できないものだけを繰り返す。
④1週間で20周:1週間で50ページを20周すれば、「すべての年号・ゴロ・赤字部分を即答」できるようになる。
(2)第二パート以降(4週間で約16時間)
①暗記法は同じ:同様に1週間で50ページを20周し暗記。
②復習:先へ進むと同時に、既習部分も、2ヶ月間は、【1日10分×週2回】など復習する。
3.まとめの表を暗記する(1)「時代と流れで覚える! 日本史B用語」
3.1.「時代と流れで覚える! 日本史B用語」を暗記するメリット
「時代と流れで覚える! 日本史B用語」(165ページ、文英堂)は、センター試験レベルの暗記をするには大変優れた教材です。これを暗記するメリットは以下です。
①用語暗記:穴埋め、赤字部分を暗記すれば、センター試験に必要な用語を8割方暗記できる。
②流れの暗記:右ページの文章はたった80ページ分で全史をまとめているので、これを10~20回読んで全部暗記すれば、日本史の流れを暗記できる。
③まとめの図版の暗記:左ページには覚えるべき事項が簡潔にまとめられた表や系図・地図が載っており、これを暗記すれば、用語同士の関連を効率的に暗記できる。
3.2.暗記の目標
①「時代と流れで覚える」の赤字の暗記(約40時間):全史の赤字の用語暗記が第一目標。
②「時代と流れで覚える」の流れの暗記(約24時間):右ページの文章を全史10回ずつ音読して流れを暗記する。
③「時代と流れで覚える」の図版の暗記(約42時間):左ページの表・図版・系図等を全部暗記する。
3.3.図表暗記にかかる時間の目安
左ページの図表の暗記にかかる時間は、ほとんど知識が入っていない人で約60時間、通史暗記後でセンター試験過去問や模試で5~6割取れる人で約40時間です。
ここでは、受験生が図表の暗記に週4時間、費やせるとして、週16ページ分(暗記するのは左ページの8ページ)、約10週間で図表を暗記する方法を書いていきます。
3.4.「時代と流れで覚える! 日本史B用語」の図表暗記法
「時代と流れで覚える! 日本史B用語」の図表暗記法
(1)第1週(16ページの完全暗記に約3時間)
①図表暗記法
表であれば、その題名と左端の項目だけを見て、表の中味を全て言えるようにする。右の項目数を左側に書いておくと暗記に便利。系図なら、全てを言えるようにする。
例えば、86ページの「享保の改革」の表の場合、左端の「人材登用・財政再建」などの項目と右欄の項目数を見て、右の「側用人の廃止、譜代大名の重視、足高の制……」を全て言う。言えなかったものを音読で覚え、また隠して言う。
表全部を言えるようにし、同じページに別の表・図版・系図等があればそれをまた暗記する。
②1ページ分の表を3周暗記(約10分)
1ページ暗記し終わったら、更に2~3周暗記していったん即答できる状態にする。
③表を1週間で20周暗記(約3時間)
1ページを3周して暗記したら、次のページに。後は同じで、16ページ分の表を全て暗記し(約1時間)、2周目に入り、1週間で16ページ分を20周し、完全に暗記する。
(2)第2~10週(全体の図表暗記に、復習も入れて約40時間)
暗記法は同じ。既習分を【週2回×20分】など復習して記憶を維持しながら先を暗記していく。
4.まとめの表を暗記する(2)「日本史B表解演習書」
4.1.「表解演習書」を暗記すべき受験生
教科書の年表を拡大し、教科書の内容のほとんどを項目ごとに整理した表(表解板書)を掲載しているのが「日本史B表解演習書」(金谷俊一郎著、東進)です。
「時代と流れで覚える! 日本史B用語」よりも図表の数が2倍多く、その分時間がかかります。
「時代と流れで覚える! 日本史B用語」は全受験生にオススメで、「日本史B表解演習書」は超難関私立大・超難関国立大志望の方にオススメです。
4.2.暗記のメリット
通史暗記でバラバラに覚えていた知識の大半をこれで整理し関連づけることができます。この表解板書は、いわば日本史の「要約」です。これを理解し、暗記できれば、日本史の要点を暗記できたことになります。
はっきり言って、ここまで整理して日本史を理解し暗記している受験生は早慶上智志望者でもマレでしょう。それだけに、これを暗記すれば他の受験生より数段先んじることができるのです。ぜひ暗記してください。
4.3.「表解演習書」の赤字を暗記する
(1)暗記する時期:通史暗記と教科書の年表・年号本を暗記後。
(2)暗記の目標
まず表解板書の全史の赤字を、次に、表解板書全体を全史暗記します。
(3)赤字の暗記:1週間で完全暗記する量を決める
まず、全体を何ヶ月で暗記するかを決め、1週間で暗記するページ数を割り出します。例えば、2ヶ月で暗記すると決めると、1週間で約20ページ暗記する必要があると分かります。以下は週20ページ暗記するとして話を進めます。
ただ、最初は1日どのくらいの時間で、1週間で20ページを暗記できるか分からないので、まず1日30分などと決め、暗記の進み具合により勉強時間を変えるか、勉強時間を固定して、1週間で暗記する量を調整します。
(4)赤字の暗記:かかる時間の目安
表解板書の全史(約160ページ)の赤字を暗記するのに、復習時間も入れて、約30時間かかります。2ヶ月で暗記する場合、1週間で1パート20ページを暗記するのに約3時間かかります。
4.4.「日本史B表解演習書」暗記法(1)赤字を週3時間で20ページ分ずつ暗記する
「日本史B表解演習書」暗記法(1)赤字の暗記
(1)見開き2ページを3周:見開き2ページを赤シートで隠して暗記し、そこを3~4周していったん即答できるようにする。2ページで5分前後。20ページで約50分。かかる時間は通史暗記時の暗記度合いによる。
(2)1週間で10周:1~2日で20ページを1周終わったらすぐに2周目に入り、同じく見開き2ページを3周して即答できるようにし、1週間で10周し、完全に暗記する。
(3)復習は必須:次の週は次の20ページを同様に暗記しながら、前の週の復習も続ける。
①第2パートに進んだら、第1パートを「10分×週2回」復習する。
②第3パートに進んだら、第1&2パートをそれぞれ「10分×週2回」復習する。
③第4パートに進んだら、第1&2&3パートをそれぞれ「10分×週2回」復習する:「10分×週2回」で少しずつ忘れていくようなら時間を増やす。記憶が深くなっているなら、時間を減らす。
④全パートをいったん暗記してからも、2ヶ月間は週2周は復習を続ける。
4.5.「表解演習書」の表全体を暗記する
(1)表全体を暗記:1週間で完全暗記する量を決める
全体を何ヶ月で暗記するかを決め、1週間で暗記するページ数を割り出します。例えば、4ヶ月で暗記すると決めると、1週間で約10ページ暗記する必要があると分かります。以下は週10ページ暗記するとして話を進めます。
ただ、最初は1日どのくらいの時間で、1週間で10ページを暗記できるか分からないので、まず1日1時間などと決め、暗記の進み具合により勉強時間を変えるか、勉強時間を固定して、1週間で暗記する量を調整します。
(2)表全体を暗記:かかる時間の目安
表解板書の全史(約160ページ)を暗記するのに、復習時間も入れて、約90時間かかります。4ヶ月で暗記する場合、1週間で1パート10ページを暗記するのに約5時間かかります。
(3)表全体を暗記:出やすいところから暗記する
表解板書全体を暗記するのは、人によっては時間がかかり、受験までに全部暗記し終わるかどうか分からないので、古代から暗記する必要はなく、自分の志望校の出やすい時代・項目から暗記していくのがオススメです。
例えば、近代・現代の政治・経済史が出やすい場合は、そこから暗記するなどです。そのためにも、早めに過去問分析をする必要があります。
4.6.「日本史B表解演習書」暗記法(2)表解板書全体の暗記
「日本史B表解演習書」暗記法(2)表解板書全体の暗記
(1)1ページずつ3周暗記(約10分):1ページずつ暗記し、そこを3~4周していったん即答できるようにする。1ページを約10分。10ページで約100分。かかる時間は通史暗記時の暗記度合いによる。
(2)表解板書の暗記法:表解板書の最上段や最左列を見えるようにし、その他を隠し、中味を言っていく。
例えば、84ページの「文治政治と正徳の治」の表解板書であれば、まず将軍とそれに対応する実力者の名前を言えるように音読・暗唱・暗記する。
次に、文治政治の4項目を言えるように、音読・暗唱・暗記する。
1ページの表解板書を一通り覚えたら、また隠してテストし、覚えていない項目を音読・暗唱・暗記する。用語で意味が分からないものがあれば、「日本史用語集」(山川出版社)などで調べ、余白にメモする。
(3)1週間で10周(約5時間):1~3日で10ページを1周終わったらすぐに2周目に入り、同じく1ページを3周して即答できるようにし、1週間で10周し、完全に暗記する。
(4)復習は必須:次の週は次の10ページを同様に暗記しながら、前の週の復習も続ける。
①第2パートに進んだら、第1パートを「10分×週2回」復習する。
②第3パートに進んだら、第1&2パートをそれぞれ「10分×週2回」復習する。
③第4パートに進んだら、第1&2&3パートをそれぞれ「10分×週2回」復習する:「10分×週2回」で少しずつ忘れていくようなら時間を増やす。記憶が深くなっているなら、時間を減らす。
④全パートをいったん暗記してからも、2ヶ月間は週2周は復習を続ける。
【終わりに】
年表・年号・図表の暗記は大変ですが、暗記することで、歴史の流れが明確になり、ごちゃごちゃになった用語が整理され、成績が上がっていきます。ぜひ暗記していって下さい。